1.夫婦の財産は誰のもの?(その4 二次相続を見据えた遺産分割)

税子「前回『二次相続は予想以上に税金がかかる』ってことを聞きました。なんで二次相続ではそんなに税金がかかってくるんですか?」

稲葉「二次相続では子供達だけが相続人になるから、単純に相続人の人数が一人減っちゃうことが原因の一つだよね。控除額が減ると相続する財産が増えて税率も大きくなっちゃうから、結果税金はかかっちゃうんだよ。それに配偶者がいないから、配偶者の税額軽減もなくなるよね。さらに妻に夫から相続した財産以外の財産があったりするともっと税金は多くなるよね。」

税子「確かに・・・じゃあ、子供達も損をしないようにするには、どういう風に財産を分けたらいいんですか??」

稲葉「二次相続を見据えた遺産分割」ってことだね。うーん・・・。実際は各々の資産構成なんかで変わってくるけど、例えば2億円の資産があった場合で見てみようか。税子さんのところと同じ家族構成で夫婦に子供2人で、子供2人は平等に同じ金額を相続するってことで考えるね。」
このとき、
①妻が税額軽減される最大の額を相続した場合
②法定相続分で相続した場合
③妻が全体の30%を相続した場合
④妻は全く相続しないで子供達だけで相続した場合
で計算してみようか。

税子「1次相続だけ見ると①が一番税金が少ないいですね~!」

稲葉「そうだね。じゃあ次は2次相続を見てみよう。」

税子「えぇと、2次相続は④だと0円!」

稲葉「1次相続でお母さんが貰わずに子供に全額あげたから2次相続ではお母さんに財産がないのでそもそも申告の必要がないよね。」

税子「たしかに・・。」

稲葉「1次相続と2次相続を計算した結果を表にまとめたよ。」

税子「わぁ!!!財産が同じ金額なのに税金の金額が!!こんなに変わってくるんですか!630万円も差が・・・高級車が1台買えちゃいますね~。分割の仕方によって税金がこんなに違うなんてビックリしました・・・!」

稲葉「そうなんだよね。計算してみると、妻が1億6千万円分の財産を相続するよりも法定相続分や30%程度で残りを子供達に相続させた方が全体としての税額が低くなることが分かるよね。こんな風に2次相続まで含めた全体で納める税金をできるだけ少なくする分け方が二次相続を見据えた遺産分割ってことだね。」

税子「そうなんですね!!じゃあ、いつでも妻が30%ぐらいで残りを子供たちが相続したら全体の税金が安くなるんですか???」

稲葉「うーん・・・。最初に言ったと思うんだけど、これは例えだから、実際は財産構成によっても違うし、小規模宅地の特例が使えるかどうかとか相続人の状況や家族構成などで全然変わってくるのでなんともいえないから、迷ったら詳しい税理士さんに相談するのがいいと思うよ。
あとはちゃんと1次相続だけじゃなく2次相続まで見据えてお話してくれる税理士さんかどうか知っておくとだいぶ違うね。」

税子「なるほど。やっぱり一言では語れないんですね。ちなみに、二次相続で税金を安くするのにやっておけることってありますか?」

稲葉「そうだね。生前贈与をして少しでも相続財産が少なくなるようにするとかだね。」

税子「年間110万円までは非課税ってやつですよね?」

稲葉「そうそう。でも毎年贈与を繰り返していると連年贈与としてみなされちゃうから気を付けてね。そうすると1年間に贈与した金額ではなく、複数年に渡って贈与した合計金額に対して課税されちゃうよ。」

税子「え!!それは困りますね。どうしたら連年贈与にならないんですか??」

稲葉「ものの本には毎年贈与額を変えるとか、贈与の日にちを変えるとか、色々対策が書かれていると思うんだけど、個人的には贈与の都度、贈与契約書を作ることをお勧めするよ。」

税子「そうか、契約書を作ればいいんですね!!契約書を作るのに注意することってありますか?」

稲葉「贈与契約書には「誰から誰に」「何を」贈与したかが書かれていると思うんだけど、できればここに贈与方法やいつまでにっていう日付を書いておくといいよね。贈与方法としては、現金を手渡しするよりも銀行口座に振り込んでもらうといいかな。そうすれば後でお金の移動を確認しやすくなるからね。」

税子「なるほど~。」

稲葉「あ、あとね、口座は受け取る人が管理している口座にすることが大事だよ!!」

税子「んん??子供が未成年だったりして親が銀行口座の管理をしているってこともありますよね。その場合はどうなんです??」

稲葉「もちろん子供が小さいときは親が管理していても問題ないよ。でも成人したら通帳と印鑑をちゃんと子供に渡してあげてねー。もしも子供が独立して住所や苗字が変わってるにもかかわらず、変更されていなかったり印鑑も普段の子供の銀行印と違っていたら、それって子供が管理してないことになるよね。つまり親の財産として名義預金と言われてしまうから要注意だよ!!」

税子「それはたしかに名義預金と言われてしまいますね・・・。」