1.夫婦の財産は誰のもの? (その1 贈与税の税率)  


ある日の税金クイズ・・・・

稲葉「これって、正解はどれだと思う?」

税子「贈与税、夫婦間と親子間、どっちが高いか・・・・うーん。①!子供の方が高い!」

稲葉「そう思うよね?」

税子「はい!夫婦間だとそもそも共有財産みたいなものだから、どっちの財産という認識は
ない。だから夫婦間の贈与税は安いと思います。」

稲葉「不正解!」

税子「えぇぇぇぇー!!」

稲葉「気持ちはわかる。税子さんの考えが一般的だと思うよ。でも、実際は逆なのよ。
国は若い世代の消費を促したいから、リタイアした世代がもっているお金を若い世代に移したいの。正解は②でした。」

税子「なんでですか?!夫婦二人で貯めたお金なのに!」

稲葉「あくまでもご主人の稼いできたお金は、ご主人のもの。それを奥さんがもらうとすると贈与税がかかるのよ。」

税子「それじゃあ、奥さんの側の口座に最初からお金を入れておいたら?」

稲葉「誰の口座にお金があるかはあまり問題じゃなくって、ご主人の稼いできたお金は誰の口座に入っていようとご主人のものだね。」

税子「それじゃあ、我が家の貯金は全部夫のものになっちゃうんです?」

稲葉「税子さんはパートとは言っても自分の収入があるから、それに見合った貯金額は税子さんの財産として認められるよ。」

税子「自分の収入に見合った額ってことは、もしも離婚したら財産分与は私が少なくなっちゃうんですか?貯金するために私がいろいろ我慢してるのに!!納得いきません!」

稲葉「いや、財産分与については税金とはまた別の話で、詳しくは弁護士さんへ・・・だけど、基本的には2分の1ずつだよね。相続税や贈与税でいう『誰々の財産』と離婚時の財産分与とは切り離して考えるんだよ。」

税子「うーん。わかったようなわからないような・・・?とにかく、相続税や贈与税の考え方では、お金はそれを稼いできた人のもので、たとえ夫婦間であってもお金のやり取りをしたら税金がかかる。そして、親子間の贈与は国が推奨しているから税率が安いってことですね。」
税子「『夫婦間であってもお金はそれを稼いだ人のもの』という話は聞きました。
でも、それだと納得できない部分があるんですよね。よく、家のお金は夫婦の共有財産って
言うじゃないですか。たとえば・・・そう!離婚!離婚するとき『財産分与』って聞きますよね? あれって半分こですよね?」

稲葉「まあ、絶対じゃないけど婚姻期間中に築き上げた財産を折半するケースは多いね。」

税子「その時も、税法上は夫の財産を妻にあげることになるから『贈与』?贈与税がかかるんですか?」

稲葉「離婚時の財産分与に対して贈与税はかからないよ。国税庁のホームページにも書いてあるよ。」

税子「じゃあ安心ですね。でも、離婚せずにその財産を持ったまま亡くなったら次は相続税ですか・・・?せっかく私が頑張って貯蓄したのに、最終的に税金で持っていかれるのは嫌だなぁ。
あ!よく、相続税がかかるのが嫌だから奥さんの口座にも貯金を移して夫と妻の財産を同じくらいの金額にしておく、とか聞くけど、これって有効ですか?」

稲葉「残念ながら全く意味がないんだよね。むしろ税金の申告をするときにややこしくなっちゃうから、デメリットはあってもメリットは無いよ。」

税子「えぇぇぇぇー!」

稲葉「たとえ奥さんの名義で貯金していたとしても、お金の出所がご主人のお給料であれば、それはご主人のお金。奥さんは預金の『名義』を貸しているだけっていう考え方になるんだ。いわゆる名義預金だね。」

税子「じゃあ奥さん名義の預金だったとしても、それもご主人の相続税の計算に入れるっていうことですか?」

稲葉「そうなのよ。しかも、奥さんのもらった年金、つまり、奥さんの本来の財産も混在しているから、分ける計算がややこしい。」

税子「無意味どころか、後々ややこしくなっちゃうってことですね・・・・。
でも、ちょっと待ってください!二人で貯めたお金は、離婚するときにもらったら 贈与税がかからないんですよね?なのに、離婚しなかったら最終的に相続税がかかるんですか?なんかおかしくないですか?じゃあ、相続になる前に離婚しちゃったほうが得なのでは!?」

稲葉「いやいや、そんなことはないって。税子さん落ち着いて。例えばこのクイズ、どう思う?」

税子「うーん・・・?税額まではわからないけど、当然、子供が相続するのと妻が相続するので税額は変わってくるべき・・・・。夫婦の共有財産を相続するだけだから、妻のほうが安くないと納得いかない!」

稲葉「正解!答えは、子供が相続した場合770万円、妻が相続した場合は0円でした。」

税子「妻は相続税がかからないんですか?さっき、名義預金は夫の財産に含めるとかありましたけど、結局非課税になるんです?」

稲葉「相続税の計算って、一回すべての財産を合計して税額を計算してから、それぞれの相続人が相続した財産の額に応じて税額を案分するの。
そして、そのあと配偶者は優遇措置があるんだよね。 絵を描くと、こんなイメージ。」

稲葉相続税って財産が多くなればなるほど税率が高くなるから、たとえば妻名義になっている夫の財産を『どうせ配偶者は非課税だから』って相続税の計算に入れなかった場合、妻以外の相続人の税額も 優遇されちゃうことになるでしょ?
だから、夫婦で築き上げた財産も一度すべて合計して相続税の計算をして、それぞれの相続人に割り振った後、妻が相続した財産のうち一定額の財産に対応する部分は税金がかからないようにするんだよ。」

税子「なるほど・・・!具体的にいくらまで税金はかからないんですか?」

稲葉「1億6千万円か法定相続分のいずれか大きい方だけど、とりあえず『配偶者が相続で財産をもらったら1億6千万円までは無税』って覚えて置いたらいいと思うよ」

税子「1億6千万円・・・・我が家はまだまだ貯金できますね~!」

稲葉「でも今回財産を全部奥さんにすると・・・その後の相続で子供がたくさん税金払う可能性が出てくるんだよ」

税子「えぇぇっ?!そうなんですか?!!むむむっ。」

稲葉「じゃぁ次は『1.夫婦の財産は誰のもの?その2 二次相続って大変!』続きます」